今回は、かんきつ果樹での土壌水分センサーの設置方法をご紹介します。
土壌水分センサーは、かんきつ果樹の灌水をデータにもとづいて管理するための基本となる機器です。
「土壌の水分が足りているか?」「木に強い水ストレスがかかっていないか?」を計測値から推定し、灌水の適切なタイミングを判断できるようになります。
ただし、土壌水分センサーは設置の仕方によって数値が変わります。設置位置が適切でなければ園地を代表する値にならず、土との密着が不十分だと正しく計測できません。せっかく導入しても、実際に木の根が吸える水分の状態が分からなければ判断材料として使えません。
ここからの説明は、LoRaWAN通信機に接続した「FDR方式(周波数領域反射方式)」の土壌センサーを使用する前提で進めます。

このセンサーでは、次の3項目を計測できます。
1. 土壌水分量(体積含水率 VWC、Volumetric Water Content)
2. 土壌温度
3. 土壌EC
注意点
FDR方式のセンサーは、機器の個体差や土質によって計測値が変わり、実際の土壌水分量(真値)とはずれが生じます。そのため、値は絶対値としてではなく、変化の大きさ(相対値)や木の状態と照らし合わせて評価します。
ある時点の値と比べて高ければその差の分だけ水分量が多く、低ければその分少ないと判断できます。
また、値はセンサーと土の密着具合によっても変わります。この記事の方法で設置すると密着の状態が安定し、水分量の変化(相対値)を正しく捉えられるようになります。
ポイント:
正しく設置する ➡ 水分量以外の要因による変化を取り除ける=正しく水分量の変化を把握できる
土壌水分センサーを正しく設置し、木に水ストレスがかかり始める値を把握しておけば、強い水ストレスで木がダメージを受ける前に灌水できるようになります。
1. まず「代表木」を決める
センサーは園地全体で1~数本しか設置しないため、園地の環境を代表する木(標本木)を選ぶ必要があります。
- 日当たり・傾斜・土質・樹勢が、園地の平均的な状態に近い木を選びましょう。
- 園地の端の木、水が溜まりやすい窪地の木、反対に乾きやすい斜面の上端の木などは避けてください。

2. 設置位置は「葉圏の少し内側」
代表木が決まったら、センサーを埋める位置を決めます。
土壌水分センサーは、木が水を吸える状態にあるかを知るためのものです。そのため、水を吸う根が多い場所に設置します。また、灌水チューブの真下では水分が実際より多く計測されるため、チューブから少し離して設置します。

- 葉圏の端より少し幹寄り
- 点滴灌水チューブから20cm以上離れた位置
- マルチを使用する場合は、マルチの下になる位置
- 深さ15〜20cm(水を吸う根が多い層の水分を計測するため)
3. 埋設の要は「土との密着」
土壌水分センサーは、3本の金属ピン(センサー部)から微弱な電気信号を出して水分を測ります。そのため、ピンが土にしっかり密着していないと、正しく計測できません。

次の手順で設置します。
- センサーを設置する深さ(15〜20cm)より少し深く穴を掘る。
- 穴の側面の土に、センサーを水平にしっかり差し込む。このとき、3本の金属ピンは縦(または斜め)に並ぶ向きにします。
- センサーを動かさないように掘った土で埋め戻し、上から踏み固める(転圧)。さらにバケツ2杯以上の水をまくと土が締まり、センサーと土がよく密着します。しっかり転圧しておくと、設置直後から値が安定しやすくなります。

設置してから計測値が安定するまでには、しばらく時間がかかります。3か月ほどかかるともいわれますが、センサーと土をしっかり密着させ、十分に転圧しておけば、早い段階で値が安定しやすくなります。
💡礫(れき)や砂が多い土壌でのポイント
礫(れき)や砂が多い土壌では、センサーと土が密着しにくく、正しく計測しにくくなります。その場合は、
- 近くから粘土質など粒の細かい土を集めて土玉をつくり、センサー部を包みます。
- 穴の側面に横穴を掘って土玉ごと差し込み、周りの土と隙間なく密着させてください。埋め戻したあとは、散水と転圧を念入りに行います。

4. ケーブルガードと通信装置の設置
センサーと通信装置をつなぐケーブルには、コルゲートチューブなどのケーブルガードをかぶせ、野ネズミなどにかじられるのを防ぎます。スリット(切れ目)入りのタイプなら、配線したあとからでも簡単に取り付けられます。

通信装置はポールに取り付け、できるだけ高い位置に設置します。目安は1.5〜2mです。地面に近いほど電波が届きにくくなるため、高さを確保すると通信が安定します。

おわりに
マルドリ方式での水ストレス管理と組み合わせた実際の運用は、以下の記事で紹介しています。ぜひご覧ください!


