農業・畜産・水産養殖向けクラウドアプリ「アクト・アップ 2.0」、機能拡張でフィジカルAIへ対応

2026年10月5日、当社は農業・畜産・水産養殖向け生産管理アプリ「アクト・アップ」を機能拡張し、フィジカルAI(Physical AI)に対応した「アクト・アップ 2.0」の提供を開始しました。2.0では、各種IoTデバイスの接続と管理を行う「アクト・コネクト」と、クラウドやエッジデバイスでのAI処理を提供する「アクト・AI」を利用できます。これまでの「IoTセンサー」や「カメラAI」に加え、換気カーテンなどの「駆動・制御設備」をアクト・アップにつなぎ、連携・操作できるようになったことで、一次産業の生産現場にフィジカルAIを実装することが可能になりました。養鶏ブロイラーでは、生産者が指示した条件にもとづいて設備を自動で制御する仕組みを稼働させています。

本日、PR TIMES でプレスリリースを配信しました。

目次

アクト・アップ 2.0 のポイント

  • 駆動・制御設備とのIoT連携に対応——これまでのIoTセンサーやカメラAIに加え、換気カーテンなどの駆動・制御設備をアクト・アップにつなぎ、連携や操作が可能に
  • 「アクト・コネクト」と「アクト・AI」が利用可能に——各種IoTデバイスの接続と管理、クラウドやエッジデバイスでのAI処理をアクト・アップから利用できる
  • 養鶏ブロイラーの生産現場で稼働中——実生産環境の鶏舎で、生産者の指示で作成したルールに従い、換気カーテンなどの設備を自動で制御
  • 既存設備を活かし、必要な機能を段階的に追加できる設計——さらに成熟度の高いフィジカルAIへの進化を見据え、技術の進化にあわせて機能やAIを積み重ねていけるシステムアーキテクチャー
  • 畜産資材EXPO(10月7日〜9日・幕張メッセ)でフィジカルAIの実機を初公開

開発の背景

日本の農業・畜産の現場では、担い手の減少と高齢化が進み、1人が支える生産規模は年々拡大しています。農林水産省によると、基幹的農業従事者は今後20年間で約4分の1(116万人→30万人)に減少すると見込まれており、60歳以上が約8割、70歳以上が約6割を占めています。今後5〜10年で、多くの生産者が引退の時期を迎えると考えられます。そこに飼料・エネルギー価格の高騰、猛暑や干ばつ、豪雨といった気候の極端化、鳥インフルエンザなどの疾病リスクが重なり、これまでの方法では生産力の維持が限界を迎えています。生き物を扱う現場では、環境管理の失敗が数時間で取り返しのつかない損失につながります。一方で、設備の更新についても「いま入れた仕組みが、この先の技術の進化についていけるか」という不安から、次の一手を決めきれない生産者は少なくありません。

熟練者は、農場や畜舎ごとの特性や個性を経験によって理解し、日々の判断を下しています。当社は、この判断をデータとAIで支え、生産者とAIが協力して生産を行うことで、人手が減っても生産を守り、生産者一人ひとりの力を拡張するパートナーとなることを目指してきました。フィジカルAIを食糧の安定供給を支える社会基盤と位置づけ、アクト・アップ 2.0はその第一歩となります。

※ 出典:農林水産省「農業の生産性の向上のためのスマート農業技術の活用の促進に関する法律について」(2025年4月)。基幹的農業従事者数と年齢構成(2023年)は同省「農業構造動態調査」による。

フィジカルAI(Physical AI)とは

フィジカルAIとは、センサーで現場を観測し(Sense)、状態を理解・予測し(Think)、設備を動かして現場に働きかける(Act)AIのことです。コンピューターや画面の中のみで完結するAIと異なり、判断の結果が現実の環境に現れ、それを再び観測して次の判断に生かす「閉ループ」を持ちます。物理への働きかけはやり直しがきかないため、安全の仕組みそのものが定義の一部となります。

フィジカルAIは一般にロボットの文脈で語られますが、当社が対象とするのは農場・養殖場という環境そのものです。カーテン・換気・給餌といった設備群をAIの「身体」として施設全体を一つのフィジカルAIに育て、今後ロボットもその一部として接続を広げていきます。

フィジカルAIの基本構造(イメージ)
図1|フィジカルAIの基本構造(※イメージ) — 鶏舎のセンサーやカメラで現場を観測し(Sense)、状態を判断して(Think)、換気カーテンなどの設備を動かす(Act)。その結果を再び観測して次の判断に生かす「閉ループ」により、施設全体が一つのフィジカルAIとして働く

アクト・アップ 2.0 の全体像

アクト・アップ 2.0では、生産者が日々使う生産管理アプリ「アクト・アップ」(現場の確認・記録、設備のリモコン操作、ルール設定、AI分析)を入口に、役割の異なるサービスが連携して動きます。現場機器の接続と管理はアクト・コネクト、クラウドと現場端末でのAI処理はアクト・AIが担い、計測や制御の結果はアクト・クラウドに記録されます。サービスはクラウドとエッジコンピューティングの両方に対応しており、現場の端末(エッジノード)とエッジAIは、クラウドとの通信が途切れても計測と制御を続けます。ロボットとの連携も、この仕組みの上で進めています。

AIは、センシング(カメラ画像からの鶏の体重や状態、風速・風向などの推定)、データ分析、制御ルールの設計と見直しの支援に、適材適所で組み込まれています。一方、設備の制御そのものは、生産者が決めたルールに従って行います。生産現場の制御には、同じ条件のもとでは常に同じ制御を行うことが求められるためです。

ルールと制御の結果は、データとして記録されます。これにより、生産者とAIが同じデータを共通の土台にして改善のサイクルを回せるようになり、その成果は農場や畜舎ごとのノウハウとして蓄積されていきます。

アクト・アップ 2.0 とサービス群の構成(イメージ)
図2|アクト・アップ 2.0 とサービス群の構成(※イメージ) — AIは現場(エッジ)とクラウドの両方で働き、現場の計測と制御はクラウドとの通信が途切れても継続する。ロボットとの連携も同じ構成で進める

養鶏の生産現場で稼働中 — 1.0の実績を、フィジカルAIでさらに前へ

アクト・アップ 2.0による設備制御は、養鶏(ブロイラー)の実生産環境の鶏舎で稼働を続けています。IoT環境センサーやカメラAIによる計測(温湿度、鶏の体重や状態の推定など)と、生産者の記録(入雛日や死鳥数など)をもとに、生産者の指示で作成したルールに従って、換気カーテンなどの設備を自動で制御しています。

アクト・アップは、1.0でもすでに養鶏の生産現場で使われてきました。1.0の導入先の養鶏場では、1ロット(4鶏舎・22,000羽)の作業時間が約1,415時間から約1,132時間へと約20%削減されています。見回りと環境調整にかかる時間の短縮によるものです。また、カメラAIによる鶏の体重推定は、誤差3%以下の精度で実用化しています。2.0では、設備制御との連携によってフィジカルAIに対応し、さらなる省力化を目指します。

効果は省力化にとどまりません。センサーとカメラAIによる24時間の計測は、人だけでは難しかった状況の把握と異変の早期発見を支えます。鶏舎の環境を適切に保ち続けることで、品質の向上とより安定した生産につなげることを目指します。導入効果は、見回りや設備操作にかかる作業時間、鶏舎内の環境、生産量・品質などの生産成績を生産者と確認しながら評価し、制御ルールの改善や、次に任せる範囲の検討に活かします。

養鶏の環境制御から、フィジカルAIの適用範囲を段階的に拡大

当社は、フィジカルAIに任せられる範囲(適用範囲)の広がりを、どこまで任せられるか(自律の深さ)とどの業務までカバーできるか(業務の広がり)の2つの方向で捉えています。これにどんな現場で確かめたか(実証環境)を加えた3つの観点で到達点を示す評価フレームワーク「PAIMM for AAA」を当社は公開しており、アクト・アップ 2.0もこの枠組みで自己評価しています。

養鶏の環境制御における現在地と、適用範囲が広がる方向
図3|養鶏の環境制御における現在地と、適用範囲が広がる方向 — 現在はセンサー・カメラAIの計測と生産者の記録をもとに、設定したルールで自動制御(M2・B1/実生産の鶏舎・特定の環境下での実証X2)

当社は、現在の養鶏の環境制御を起点に、生産者にとって優先度が高く、実現性の高い業務領域から、任せる深さ(自律の深さ)とカバーする業務(業務の広がり)の両方向へ、フィジカルAIの適用範囲を段階的に広げていきます。

※ PAIMM for AAAは当社独自の枠組みによる自己評価であり、第三者認証ではありません。各段階の定義と評価の方法は、当社ブログで公開しています。

既存設備を活かし、段階的に拡張できる2.0のシステムアーキテクチャー

アクト・アップ 2.0は、既存設備を活かしながら必要な機能から導入でき、自律の深さ・業務の広がり・実証環境の各観点で、さらに成熟度の高いフィジカルAIへ進化していくことを見据えたシステムアーキテクチャーとして設計されています。現場の計測と設備制御がつながり、システムに任せる範囲を設定でき、機能やAIを後から追加・更新できるため、作り直すことなく段階的に拡張することが可能になります。その土台となるのが、次の3つの仕組みです。

  • つなぐ・組み込む — オープンなインターフェース:多様なIoTセンサーや制御装置を接続できるオープンなインターフェースを備え、さまざまなAIを追加して組み込めます。新しい機器やAIも、既存の仕組みを活かしたまま追加できます。
  • 育てる — データとAIによる改善サイクル:収集・蓄積したデータを、生産者自身がAIを使って分析し、AIと議論しながら判断や制御のルールを見直せます。現場で改善のサイクルを回すことで、仕組みそのものが育っていきます。
  • 支える — 遠隔モニタリングと保守:フィジカルAIを構成するIoTセンサーやカメラ、制御機器などの物理デバイスを常時監視し、稼働状況の確認や機器の管理を遠隔から行えます。故障時も遠隔から状況を把握し、対応を支援します。生産者を支える地域の販売代理店やメンテナンス企業も利用でき、少人数でも安定した運用を支えます。

今後の展開

当社は、養鶏ブロイラーの生産において、生産者の数が減っても生産を持続できるよう、アクト・アップの導入前と比べて生産者一人あたりの飼育・生産羽数を倍増させることを目標としています。アクト・アップ 1.0で得られた作業時間約20%削減の実績を土台に、2.0では設備制御との連携を通じて、さらなる作業負担の軽減と品質の向上、安定生産を目指します。

この目標に向け、現在の接続・分析機能を基盤として、現場のニーズに応じた機器やAIへの対応、ロボットとの連携を進めます。同時に、計測データ、制御の記録、生産成績を関連づけた分析を強化し、生産者が制御ルールの効果を確かめ、見直すために活用します。

その成果は作業時間や生産成績などで確認し、養鶏以外の畜産や農作物、水産養殖でも、生産者とともに現場に合った活用を広げていきます。既存設備と現場の経験を活かしながら、任せられる仕事を増やし、生産者一人ひとりが担える生産規模を広げていきます。

畜産資材EXPOでフィジカルAIを初公開

10月7日(水)〜9日(金)、幕張メッセ(7ホール・ブース番号22-31)で開催される「畜産資材EXPO」に出展し、当社のフィジカルAIを初公開します。多様なIoTセンサー、カメラAI(体重推定・状態推定・風速風向推定)、生産者の記録と確認に使うスマートフォン・スマートグラス、通信が途切れても稼働するエッジノードとエッジAI、そしてこれらの計測結果をもとに設定した条件で開閉を制御するカーテン制御コントローラーを実機で展示し、センサーから設備制御までの実際の動きをご覧いただけます。導入をご検討中の生産者の皆さまは、ぜひブースにお立ち寄りください(ご来場には事前登録が必要です。招待券をご希望の方はお問い合わせ先までご連絡ください)。

概要

  • 提供開始日:2026年10月5日(月)
  • 対象プロダクト:アクト・アップ 2.0(機能拡張)。フィジカルAI対応のIoT接続「アクト・コネクト」・AI処理「アクト・AI」を、クラウド・エッジ両対応のサービスとしてアクト・アップから利用可能
  • 稼働実績:養鶏(ブロイラー)の実生産環境の鶏舎で、生産者の指示で作成したルールにもとづくカーテンの自動開閉制御が稼働中(PAIMM for AAAによる自己評価:自律の深さM2・業務の広がりB1・実証環境X2)
  • 初公開の場:畜産資材EXPO(10月7日〜9日・幕張メッセ 7ホール・ブース番号22-31)にて、フィジカルAIの実機(IoTセンサー、カメラAI、スマートグラス、エッジノード・エッジAI、カーテン制御コントローラー)を初公開
  • プレスリリース:PR TIMES で見る

お問い合わせ

アクト・アップ 2.0 や畜産資材EXPOの招待券についてのお問い合わせは、下記までお気軽にご連絡ください。
株式会社アクト・ノード 広報担当 Mail:info@act-node.com

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この記事を書いた人

百津正樹のアバター 百津正樹 株式会社アクト・ノード代表

株式会社アクト・ノード代表

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