光回線のない養鶏場に IoT の土台をつくる ― 山口県「こっこ」様での設置作業レポート

山本

こんにちは、アクト・ノードの山本です。

2026 年 2 月 19 日、山口県で養鶏場を経営しているこっこ株式会社さんにお邪魔して、Starlink(衛星インターネット)の設置作業をしてきました。

今回はその 1 日の記録です。

こっこさんの鶏舎と周囲の環境の様子
目次

養鶏場での作業の効率化・次世代の育成に貢献するアクト・アップ

養鶏場では、鶏舎内の温度や湿度を確認・管理し、鶏が快適に過ごせる環境を保つ必要があります。飲み水の量、体重の変化、死鳥の数。こうしたデータを毎日記録して、異常がないか目を光らせています。

養鶏場のイメージ

ただし、この管理作業を人力で行うのは、かなりの手間がかかります。鶏舎が何棟もあれば、見回りだけで 1 日の大半が終わってしまうのです。

また、適切な管理のためには長年の経験や知恵が必要です。その知識を若手に継承するには時間がかかります。きちんと引き継ぎが行われないと、ベテランの方の引退とともに「あの人にしかわからなかった勘どころ」も一緒に失われてしまうのです。

これらの課題解決のため、弊社のクラウドアプリ「アクト・アップ」は活用されています。センサーやカメラで鶏舎の状態データを自動的に記録・蓄積し、スマホやパソコンから誰でも視覚的に確認できるようにすることで、養鶏場での作業の効率化・次世代の育成に貢献しているのです。

郊外や中山間地域でアクト・アップを活用するための、Starlink

アクト・アップはクラウドアプリのため、動かすにはインターネット接続が必要です。センサーが取ったデータをクラウドに送らなければ、スマホで確認することはできません。

ところが、養鶏場は郊外や中山間地域に立地していることがほとんどです。光回線が引けない。携帯の電波も不安定。

「データを取りたいのに、そもそもインターネットがない」

これが郊外や中山間地域でアクト・アップを利用する際に立ちはだかる、最初の壁です。

ここで私たちが活用を試みたのが、Starlink(スターリンク)です。Starlinkは、イーロン・マスク氏率いる SpaceX 社が提供する衛星インターネットサービスです。

Starlinkでインターネット接続をするイメージ

光回線のようにケーブルを引き込む工事は不要で、アンテナを空が見える場所に置くだけでインターネットに繋がります。山奥でも海の上でも使えるため、インフラが整っていない地域での通信手段として注目されています。

今回の現場はまさにそういう場所。Starlinkが使えるかどうか、実際に現地で検証して、使えるなら設置まで一気にやってしまおうという作業でした。

インターネット環境を整えるための準備

当日のメンバーは 3 名。代表の百津、藤井、そして山本(私)の 3 人でこっこさんに向かいました。

朝 9 時に現場到着。まずは事前に届いていた機器の開封から始めます。

Starlinkの箱を開けると、フラットなアンテナ本体とルーターが入っています。セットアップガイドもシンプルで、基本的にはアンテナを空が見える場所に置いてアプリを開けば繋がる仕組みです。

今後設置予定のセンサーやカメラも一緒に届いていたので、まずはすべての機器を机に並べてどこに何を設置するか打ち合わせをしました。

温湿度センサー、水道メーター、土壌センサー、カメラ、エッジ AI ノード。将来的にはこれらの機器で鶏舎の中をまるごとモニタリングする予定です。ただし、この日は鶏舎内に飼育中の雛がいるため、中に入っての設置作業はできません。まずはインターネット環境を整えることに集中します。

想定外 ― Starlinkが繋がらない

10 時すぎ、屋外に出て Starlinkの設置テストを開始。

現場は山に囲まれています。鶏舎の周囲は竹林と杉林。空を見上げても木の枝が視界を遮ります。

まずは Starlinkのアンテナを地面にそのまま置いて、アプリで接続を確認しました。

繋がらない。

Starlinkは衛星と直接通信するので、アンテナと衛星の間に木や建物があると電波が遮られてしまいます。地面に置いた状態では、周囲の木が邪魔をしてどうにもなりません。

「高さを変えてみよう」ということで、アンテナを頭上に持ち上げてみたり、場所を変えてみたり。何度もチャレンジしましたが、安定した接続にはなりません。

「これは簡単にはいかないぞ……」

Starlinkがあっても、「電波を安定的にキャッチできない」という二つ目の壁が待っていました。

それでも場所を変えながら粘り強くテストを続けた結果、鶏舎の奥の方でギリギリ繋がるポイントを見つけました。ただし不安定。もっと高い場所にアンテナを持っていかないとダメだということがわかりました。

ひとまず「高い位置に設置できれば、繋がりそう」ということが確認できたので、一区切りつけて昼食に。

作戦会議(兼 昼食)

近くの定食屋さん「本陣」でハンバーグ定食をいただきながら、午後の作戦を練り直しました。

「高い位置に設置すれば繋がる」ことはわかった。問題はどうやって高い位置に上げるか。

Starlinkを鶏舎の屋根に上げる

チームで相談した結果、方針が決まりました。

「鶏舎の屋根の上に設置しよう」。

午前中のテストで「高い場所なら繋がる」ことはわかっていました。鶏舎の屋根の上なら周囲の木々より高く、空が開けています。鶏舎のそばに飼料タンク用の鉄塔が立っているので、それをつたって屋根に上がることができます。

百津が鉄塔をつたって鶏舎の屋根に上がり、Starlinkアンテナの設置を開始しました。下では藤井がスマホの Starlinkアプリを見ながら、リアルタイムで接続状況をチェックし続けます。

アンテナを鶏舎の屋根の上に設置して、

アプリを確認すると「オンライン」になり、無事にインターネットに繋がりました。

Screenshot

山奥の養鶏場に、衛星経由のインターネットが開通した瞬間でした。

ルーターやゲートウェイを設置

繋がったのは嬉しかったのですが、ここからが本番です。

アンテナは鶏舎の屋根の上。しかし、ルーターやゲートウェイ(センサーのデータを集める中継機器)は地上に置く必要があります。屋根から地上までをケーブルで繋がなければいけません。

使ったのは45 メートルの LAN ケーブル。鶏舎の外壁に沿わせて、結束バンドで一つひとつ固定していきます。途中のポイントには LoRaWAN ゲートウェイ(センサーとインターネットを繋ぐ中継器)を接続します。

鶏舎にStarlinkを設置する際のイメージ

さらに、屋外に置く機器は雨対策が必要です。ウォルボックス(防水ボックス)や延長コード、パテなどの資材が追加で調達し、設置しました。

ウォルボックスの中にルーターやゲートウェイを収めて、延長コードの防水処理にはパテを使用。一つひとつ、雨に濡れても問題ないように処理していきます。

IT 企業の仕事というよりも、完全に現場仕事です。でも、この泥臭い作業がなければスマート農業は始まりません。

すべての配線が終わり、最終チェック。速度テストを実行すると220Mbps!!!

山奥の養鶏場で、都市部の光回線に引けを取らない速度が出ました。思わず藤井と顔を見合わせて「すげえ……」と声が出ました。

これからのこと

今回の作業では、インターネット環境の構築に 1 日を費やしました。内容をおさらいすると、以下の通りです。

  • Starlink 衛星通信でインターネットに接続(220Mbps)
  • 45 メートルの LAN ケーブルを鶏舎に沿わせて配線
  • LoRaWAN ゲートウェイの設置・接続
  • ウォルボックスとパテによる屋外機器の防水処理

次のステップとしては、雛が出荷された後のタイミングで鶏舎内部の作業に入ります。

  • 温湿度センサーの設置と計測開始
  • 水道メーターによる飲水量の自動計測
  • AI カメラの設置と、エッジ AI ノードによる鶏の体重自動推定
  • 換気窓の自動開閉コントローラーの設置
アクト・アップ実装後の鶏舎のイメージ

すべてのセンサーが稼働すれば、鶏舎の温度や鶏の体重といったデータがリアルタイムでクラウドに送られ、スマホからいつでも確認できるようになります。異常があればアラートも届く。そんな環境が、今回構築したインターネット回線の上に乗ってきます。

おわりに

「スマート農業」というと、ハイテクなイメージが先行するかもしれません。しかし、その第一歩は鉄塔に登ってアンテナを設置することだったり、LAN ケーブルを結束バンドで壁に留めることだったり、ホームセンターに防水ボックスを買いに行き設置することだったりします。

泥臭くて、一筋縄ではいかなくて、でもちゃんと繋がった時は嬉しかった。そんな 1 日でした。

スマート農業の土台は、こういう地道な作業の積み重ねでできています。

_アクト・ノードは、IoT と AI を使ったスマート農業ソリューション「アクト・アップ」を提供しています。養鶏・農業・水産養殖など、一次産業の現場でデータを活用する仕組みづくりをお手伝いしています。「通信環境がない」「データの活用方法がわからない」など、現場の課題やお悩みがありましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。_

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この記事を書いた人

アクトノードで現場での機器の設置やUI/UXの改善を担当中。

好きな生きもの : ねこ🐈

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