【みかん多収生産のコツを大公開】しつけることで、手間のかからない木を育てる

前回のブログでは、愛媛真穴エリアのみかん生産の名人「黒田さん」に、灌水管理について詳しく話を伺いました。「マルドリ」と「土壌水分計」の組み合わせで水ストレスを徹底管理する方法にびっくり。

今回は、黒田さんが各季節にどのようにみかんを管理し、多収を実現しているのかを解説してもらいます。

黒田さん

ちなみに、私の圃場では早生温州と南柑20号をメインに栽培しています。

目次

春の管理:葉と花の「最適バランス」を見極める

4月の終わりごろ、みかんの木は蕾をつけます。黒田さんの圃場は4.37ha。そのうち、一番標高の低いところから蕾がつきはじめ、山を登るように蕾が順についていきます。一番標高が低いところの蕾がついてから2〜3週間ほどの間に黒田さんが必ず行うのが、摘蕾作業です。

蕾がたくさんついている枝が多い場合に、摘蕾を行います。摘蕾を行うとその場所から芽が出てきて、結果的に葉が増えることにつながります。早く摘蕾するほど、早く芽が出るそうです。反対に、蕾が少なく芽の多い枝が多い場合は、蕾の周りの芽をかいていきます。これは、生理落下で果実が少なくなるのを防ぐためだそう。

💡 生理落下とは?

みかんの木が自身の健全性を保つために、未熟な実を落とす自然現象のこと。気温が高くなる6月ごろに起こります。近年、温暖化の影響で、生理落下が多すぎる年があるそう。どのくらい生理落下するか予測がつかないので、多めに花を残すようにしているそうです。

黒田さん

この「春の摘蕾作業」をしている農家さんは少ないのですが、一年のうち最も大切な工程の一つだと思っています。

この作業と秋口の手入れをきちんとすると、「花がついている枝(=今年果実がなる枝)」と「芽だけがついている枝(=来年果実がなる枝)」のバランスが毎年同じようにキープされるようになるんですそうなると、手入れが簡単になっていきます。

剪定をすると葉を落としすぎてしまうし、思ったよりも芽が出ない。一方、蕾を取れば確実に芽が出るからバランスをとりやすいんです。

ちなみに、九州地方では生理落下の時期に多くの農家が摘花剤を使って、生理落下を誘発して花の数を調整しています。しかし、それでは花の数の調整が難しいと黒田さん。その年に仮に調整がうまくいっても、各年結果(収量の多い年と少ない年を繰り返す現象)は直らないんだとか。

黒田さん

生理落下するかしないかのタイミングで果実を落としても、芽は出にくいです。芽を出したいなら、蕾のときに管理するのが大切なんです。

夏の管理:秋に備えて、木の体力消耗を防ぐ

7月から9月は、 みかんの木が水ストレスを受けないよう、土壌水分量が30%前後で推移するように水管理を徹底します。

黒田さん

昔はここまで気温が高くなかったので、ここまでの管理は必要がありませんでした。木が受けるストレスが少なかったのです。ところが、近年は、猛暑でみかんの木はすでにたくさんのストレスを受けています。これ以上ストレスをかける必要がなく、むしろ、ストレスをできるだけかけずに果実の成長を手助けする必要があります。そのために水管理を徹底するわけです。

これができないと、大きなストレスを受けて落葉し、夏や秋口にかけて芽が出てしまいます。すると、新芽に養分がいってしまう。果実は大きくならないし、品質は落ちるし、色もつきません。結果、収量が減ってしまうのです。

ちなみに、あまり生理落下が起きなかった年は、7月から9月いっぱいくらいまで、果実の大きさをみながら木の状態に合わせて摘果をします。

黒田さん

9月いっぱいくらいまでの期間に圃場を何周か見て回り、複数回に分けて摘果するようにしています。1回目は果実が小さく、摘果作業にあたりますが、2・3回目には果実はすでにある程度肥大しているので、摘果というより選果をしていくイメージですね。なぜ分けて摘果するかというと、遅くまで果実を多くならせて着果ストレスをかけたいからです。

💡 着果ストレスとは?

いわゆるなり疲れのことで、果実を多くつけすぎたことによって栄養分が果実に取られ、木自体が弱ってしまうことのこと。通常は好ましくないものとして扱われますが、黒田さんは、果実の糖度を上げるために着果ストレスを有効に活用して、栽培管理をしているのです。

黒田さん

糖度を上げるために、秋口にはみかんの木にストレスをかけていきます。水ストレス➕着果ストレスを加えたいんですね。

着果数が多く着果期間が長いほど着果ストレスは大きいので、できるだけ長く果実をならせておきたい。とはいえ、いつまでも着果させておくと果実の肥大が止まって小玉が増えたりする。木の様子を見ながら、着果ストレスが有効にかかるように、調整するのがこの時期です。

秋の管理:水ストレスをかけて、熟期を早める

10月以降、最低気温と地温が下がってくると、土壌水分量が減っても水ストレスがかかりにくくなるそう。そこで黒田さんは、10月後半からは土壌水分量を23〜24%まで下げ、木にかかるストレスを強めていきます。うまくストレスがかけられると、糖度・品質が向上し、熟期と着色が早まるといいます。また、9月くらいから10月初めくらいにリン酸液肥をあげ、熟期と着色の促進させます。

💡 着果・着葉ストレスが大切

マルチを敷いていても、10月に長雨が降ると土壌水分量が高くキープされてしまい、水ストレスがかからなくなります。このタイミングでストレスがかからないと糖度が上がらないため、大事になるのが、着果・着葉ストレスです。

黒田さんは、みかんの木1本あたり、葉の数:果実数=13:1〜15:1を目安に管理しています。一般的には、20:1〜25:1で管理している方が多いため、いかに黒田さんが果実を多くつけているかがわかります。ちなみに、剪定をほぼしないため、葉の数もすごく多い状態がキープされています。要するに、果実と葉がたくさんついていることで木にストレスがかかっており、これにより果実の品質が向上するのです。

ちなみに……

以前は梅雨が明確にあり、その後の乾燥したタイミングで水ストレスが自然にかかっていました。合成された糖は芽の伸長ではなく果実の転流に使われ、秋に糖度の上昇を促進していました。しかし、最近は梅雨が不順で適度なストレスが期待できないため、秋にどれだけストレスをかけられるかが勝負だといいます。

ちなみに、この時期に、果実が少なく芽が多い木については、夏秋梢を根本からカット。ほかの枝も剪定で整理します。この剪定は、翌年の摘蕾作業を減らす目的で行います。

黒田さん

温暖化が進む前は、秋に剪定をすると冬に落葉しすぎてしまっていました。だから、秋に剪定はできなかったんです。しかし、今は冬の寒さが足りず落葉が少ないので、秋に剪定しても問題がない。むしろ、秋に放っておくと、春の剪定で作業負担が増えてしまうんです。だから、秋に剪定をすることにしています。

春の摘蕾と夏からの摘果、不作時の秋の剪定をしっかり行うと、「花をつける枝」と「芽をつける枝」の割合が毎年ちょうどよくキープされるようになります。そうすると手入れが簡単になります。10年以上あまり手を入れていない木もありますね。

冬、収穫期の管理:翌年に向けて回復を早める

適切なストレスをかけられると、着色が速く進み、収穫期が早まります。そのような年は、たとえば早生みかんの場合、初回の収穫でたくさん取れます。そのため、初回の収穫にかかる時間が長くなり、2回目の収穫を始るまでに期間が空きます。その結果、2回目までに多くが熟し、2回目で収穫が完了することもあると言います。ちなみに、着色が遅い年はなかなかまとめて収穫ができないため、3回に分けて収穫することになります。

早く収穫を終えることで、樹勢が回復し、翌年の花付きがよくなるのです。

また、収穫が始まる頃から、窒素主体の液肥をあげるようにしています。毎年12月いっぱいくらいまで液肥を多数回施肥しており、それが次の春ごろのスムーズな樹勢回復につながっています。地温が低くなると、施肥をしても吸収しないので、11月初めの地温が高いうちに始めているそうです。液肥で水ストレスが減りますが、すでに収穫が始まっているので問題ありません。

黒田さん

従来の固形肥料では、マルチがあると施肥できませんでしたし、冬にあげたとしても溶けず、分解されず、効かなかったんです。しかし、マルドリはマルチの下に敷設され、溶けたり分解させたりする必要のない液肥をあげられるため、いつでも施肥できるようになりました。

卓越した技術をおさらい

高品質・多収を実現する、名人の技術をおさらいしましょう。

  • 春:摘蕾、摘芽作業を行う
  • 夏:木にストレスをかけないよう、水管理を徹底する(必要に応じて摘果)
  • 秋:積極的に木にストレスをかける
  • 冬:早めの収穫と液肥によって、樹勢回復を早める

実際に黒田さんのみかんをいただいてみると、今までに食べたことがないくらい味が濃くてびっくり。甘さも酸っぱさもはっきりしていて、とても美味しかったです!

黒田さんのお話を聞いて、みかんに合わせた栽培技術の重要性を学ぶことができました!ありがとうございました!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

カスタマーコミュニケーションやPR記事、事業や技術紹介ブログの作成を担当。民間企業でイチゴを研究。農学博士。

好きな生きもの:イルカ

目次