スマート農業の進化と普及を進める国のお金について

スマート農業の技術においては、サービスを生産者の方に有効活用して頂き対価を支払っていただくまでには時間がかかることがほとんどです。農業生産の領域ではVC(ベンチャーキャピタル)なども投資効率の悪さからほとんど投資対象になりません。一つ一つの生産者を見ても大規模な先行投資を行えないことは容易に想像がつくのではないかと思います。このような状況で政府からの資金援助はスマート農業分野の技術進歩と普及においては重要な資金になります。

これまでアクト・ノードも政府の資金援助を受けていますが「経産省」関連のみで、「農水省」関連は申請を行っても認定されない状況が続いています。最近は農水省関連のこれらのお金について説明する機会も増えているので今回ブログで、その一部をご紹介したいと思います。

目次

スマート農業の技術開発

昨年からのお米や野菜の品不足から、日本に住む皆さんも「食」の安定供給についての関心が高まっていると思います。農林水産省は「食の安定供給」をミッションとする省であり、現在だけでなく未来においても持続的な「食の安定供給」が可能な施策を行う機関になっています。

特に未来に向けて技術進化と生産現場への普及は重要な取り組みであり、国策として最重要項目の一つです。
2024年には「スマート農業技術活用促進法」 が施行され、この取り組みを加速するための法整備が行われました。https://www.maff.go.jp/j/kanbo/smart/houritsu.html 特にこれから20年間で生産人口が4分の1まで減少する現状に対して、生産構造の大きな変革をドライブする内容となっています。

みなさんもご存じだと思いますが「スマート農業」の取組は以前から実施されており、日本政府もこれを強く支援しています。次の図に農業関連の技術進化に投入される国家予算の流れを書いてみました。農林水産省の管轄下には「農研機構(NARO)」という国立研究機関が存在します。日本には4つの超大型研究機関(職員3000人規模)※が存在しますが、農研機構はその一つで国内最大級の研究機関です。この運営にも毎年600~800億円の国家予算が投入されています。
※ 理化学研究所(3000人超)、日本原子力研究開発機構(3000人超)、産業技術総合研究所(約2800人)

農林水産省 (MAFF) www.maff.go.jp
農林水産技術会議事務局 www.affrc.maff.go.jp
研機構 (NARO) www.naro.go.jp
生物系特定産業技術研究支援センター (BRAIN) www.naro.go.jp/laboratory/brain/index.html
ChatGPT4o https://chatgpt.com/share/6843ac70-4620-800d-aad2-9fdc5d964b3c

「スマート農業」の技術開発を進める民間を含む他の研究機関への配布(委託や補助金)の多くは「農研機構」の一部門である「生物系特定産業技術研究支援センター(BRAIN)」が公募を行い配布先の決定を行います。BRAINは予算執行には非常に強い決定権を持っており、この審査を通過しなければ農水省関連の資金による取り組みが出来ないことになります。裏を返せばBRAINは日本においてスマート農業の進化と普及を進め・更に加速するための審査・判断と技術に関するしっかりとした目利きを求められる重要な役割を担っています。
これは私個人の見解ですが、BRAINの審査員には研究者や行政関連の方が多く、生産現場の状況生産オペレーションの実態導入ハードルとなる条件が十分理解されていない評価や判断が多数行われていると考えています。

生産現場のニーズや課題と技術開発への反映

一方2025年度からスマート農業イノベーション推進会議IPCSA : Innovation Promotion Conference for Smart Agriculture, イプサ)が発足します。https://www.naro.go.jp/collab/ipcsa/index.html
これは、開発された「スマート農業技術」とそれを使う「生産現場」をつなぎ技術活用を促進する会議(コミュニティー)です。この会議により、開発されたスマート農業技術がより生産現場へ普及し活用が推進されることが期待されます。

2024年9月30日に開催された準備会合資料より抜粋。

IPCSAの取組は始動段階にあり、まだ活動内容についてはこれからというところです。
2025年6月27日に「IPCSAの設立総会(第1回総会)」が開催されます。すでに開発済みの「スマート農業」技術を活用するだけでなく、生産現場のニーズを技術開発フェーズへもしっかり反映するような取り組みが必要だと考えています。私も生産者の方とIPCSAへ参加し、しっかりと情報発信できればと思います。

スマート農業技術の開発と普及のネックには、このほかにインフラや生産地域の組織体制に関する課題も大きいと考えています。こちらについては活用される政府の資金も異なり、また制度上の問題も大きく絡んでくるため別記事でご紹介できればと思います。

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この記事を書いた人

百津正樹のアバター 百津正樹 株式会社アクト・ノード代表

株式会社アクト・ノード代表

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